天を衝く 秀吉に喧嘩を売った男・九戸政実

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天を衝く〈1〉―秀吉に喧嘩を売った男九戸政実 (講談社文庫) 天を衝く〈2〉―秀吉に喧嘩を売った男九戸政実 (講談社文庫) 天を衝く―秀吉に喧嘩を売った・男九戸政実〈3〉 (講談社文庫)
高橋 克彦(著)

読み終えて、抜群のカタルシスを味わいました。気持ちいいです。

主人公は九戸政実。東北地方の戦国武将です。

政実は同年代の織田信長を意識しながら、九戸党をひきいて乱世を暴れまわります。

秀吉が天下の覇権をにぎると、東北の武将の多くは秀吉に屈しました。しかし政実の九戸党は様々ないきさつから秀吉軍と真っ向勝負することになります。

小説の前半では、政実とその敵対勢力のあいだで、国内の主導権争いがスリルいっぱいに展開していきます。それぞれがそれぞれの策を繰り出しながら、シビアな先の読み合いがつづきます。

敵をうまく躍らせている、と思い込んでいる人が、じつは誰かの手の中で踊っていたり。

ときには、

政実が二重三重の罠にはまってどんどん追い込まれてしまうこともあります。そのピンチをみごとな一手で脱出したときの知的爽快感はたまりません。


36歳の政実が、

「三十六だぞ。これから先、何年残されているか分からぬ歳となった。無駄なことに費やしている暇はない。天下を揺さぶっている織田信長とて俺よりわずか二歳年長でしかない」

という焦りを見せるのも印象的でした。頭が切れて、度胸があって、いくさでは負け知らず。そんな政実が垣間見せる人間らしさが妙に生々しくて親近感を抱きました。

後半からラストにかけては、読みながらGを感じるようなスピード感があります。

最大の盛り上がりはなんといっても秀吉軍との対決です。10万の秀吉軍をたった5000人の少数精鋭で自由自在に翻弄する政実の腕前は、見応え十分です。

ラストシーン。風がどっと吹いて木々を揺らす場面があります。その風の力強さ、凛としたさわやかさは、まさに九戸政実の生き方そのものを象徴しているように思えました。

天を衝く〈1〉秀吉に喧嘩を売った男 九戸政実
天を衝く〈2〉秀吉に喧嘩を売った男 九戸政実
天を衝く〈3〉秀吉に喧嘩を売った男 九戸政実

at 07:43, あーりー, 歴史小説

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壮心の夢 - 戦国武将の短編小説

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at 08:32, あーりー, 歴史小説

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風林火山 - 井上 靖(著)

風林火山 (新潮文庫)
風林火山 (新潮文庫)
井上 靖(著)

読み終えた時、胸がビリビリと震えました。心臓を神様に握りつぶされたような、悶え、高ぶり、感動です。素晴らしい小説でした。

今川家への仕官を望みながら9年間も叶わずにいた山本勘助。彼は今川家を見限り、ある計略によって甲斐・武田家への仕官を果たします。勘助は持ち前の智謀で若き当主・武田晴信(信玄)を助け、新参者ながら存在感を増していきます。

はじめは山本勘助の不思議な境遇や切れ味抜群の頭脳に惹かれて読んでいました。その後、すぐに信玄の魅力も感じるようになりました。この小説を読んで、勘助はもちろんですが、信玄も好きになりました。

老将・山本勘助と、青年武将・武田信玄。素敵なコンビですね。はじめは勘助が付いていないと危なっかしいとも思えた信玄ですが、武将としても人間としても成長していきます。いざ決断となると、胸がすくような英断をさらりとやってのけます。ときどき無茶苦茶なことをしでかして勘助を困らせたりもしますが、信玄は勘助のことが好きですし、すごく大切に思っています。

信玄は軍議の席では「いつも勘助をいたわりかばって」います。「これまであらゆる辛酸を嘗めて生きて来た」勘助に、「花を持たせた」いと思っています。もちろん勘助のほうも信玄を大切に思っています。信玄の存在は勘助にとって「唯一つの、美しい壮大な夢」なんです。

この2人の最大の強敵が、越後の上杉謙信です。ラストの川中島の戦いは、すごく良かったです。ここで描かれているのは、歴史上全部で5回あった川中島の戦いの中でも、最大の激戦となった第四次合戦です。

信玄は上杉謙信の神がかり的な戦術によって大ピンチに陥り、弟の信繁を失います。武田軍の作戦を立てたのは勘助です。勘助は責任を感じますが、信玄は勘助の作戦の不首尾を一切責めることなく、それどころか、さりげなく勘助をかばいます。

命の危険を前にして、微動だにしない信玄。勘助がこれまで見て来たどんな信玄よりも立派な信玄がそこにはいました。武田家の中にも派閥のようなものがあって、日頃は対立もしていました。それが信玄を守るという共通の目的のために命をかける姿にも感動しました。

at 16:35, あーりー, 歴史小説

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もののふ - 柴田錬三郎(著)

もののふ (時代小説文庫)
もののふ (時代小説文庫)
柴田 錬三郎(著)

源平時代、室町時代前期、戦国時代、江戸時代、幕末、明治などを生きた様々な人々の命の燃え方をとらえた短編集です。

織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、武田信玄、明智光秀、斎藤道三、太田道灌、清川八郎、源義家その他、多くの人物のエピソードが語られています。

骨太です。とくに、印象深かったのは次の2作品です。

『生命の糧』

武士になりたいと望み、出世のためがむしゃらに突っ走った農民の茂平。しかし茂平は初めてのいくさであっけなく敗れ、傷いて倒れます。

瀕死の状態の茂平は、妻がくれたお守りを思い出します。彼はその中身を見て、涙が止まりませんでした。

今まで身近すぎてわからなかった大切なものの存在に気づいた時には、もう手遅れだという厳しい現実が、哀しいです。

『斎藤道三残虐譚』

「智慧の働き」に絶対の自信を持つ道三が、みごとな奸計によって出世を重ね、ついに美濃一国を手に入れます。手の込んだ奸計は痛快でありながら、正直身震いするほど恐ろしくもありました。

at 13:09, あーりー, 歴史小説

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蜂須賀小六 - 秀吉の天下取りを支えた男

蜂須賀小六―秀吉の天下取りを支えた男 (PHP文庫)
蜂須賀小六―秀吉の天下取りを支えた男 (PHP文庫)
浜野 卓也(著)

戦国時代は面白いですね。いろいろな面白さがありますが、そのひとつは秀吉の出世です。

蜂須賀小六はかつて、喰うのに困っていた日吉(のちの豊臣秀吉)を世話してやりました。40年後、秀吉は位人臣をきわめ関白となりました。食うや食わずの男が関白になる。この不思議な出世物語の一部始終を間近で見てきたのが小六です。

秀吉の大出世を、秀吉本人の視点ではなく、小六の視点からながめるというのも、変化があって良かったです。

at 16:17, あーりー, 歴史小説

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佐竹義重 伊達も北条も怖れた常陸の戦国大名

佐竹義重(よししげ) 伊達も北条も怖れた常陸の戦国大名 (PHP文庫)
佐竹義重(よししげ) 伊達も北条も怖れた常陸の戦国大名 (PHP文庫)
近衛 龍春(著)

関東の戦国大名・佐竹義重が主人公の歴史小説。父・義昭が死去して、義重が一人立ちするところから始まります。わりと淡々とした調子で進みます。地図や家系図なども載っていますし、個人的には歴史小説としてよりは「佐竹義重を知るための歴史の本」として読みたい本でした。

at 13:30, あーりー, 歴史小説

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武神の階 津本陽(著)

武神の階〈上〉 (角川文庫) 武神の階〈下〉 (角川文庫)
津本 陽(著)

2007年の大河ドラマ『風林火山』で楽しみなのは、Gackt(ガクト)が演じる上杉謙信です。

Gacktも謙信もどことなく神秘的で妖しい魅力があるので、けっこうしっくり来るんじゃないかとワクワクしています。

さて。

この『武神の階(きざはし)』は、その上杉謙信が主人公の小説です。1990年に「新潟新報」や「北日本新聞」など18紙に連載されました。

もっとも興味深かったのは、ある冬の昼下がり、謙信が後継者の景勝にいくさのコツを語るシーンです。

城攻めの心得、野戦で勝利する秘訣、いくさの駆け引きなど、とても具体的に細かい点までひとつひとつ伝授していきます。ライバルの武田信玄と戦ったときのことなど、実例も豊富でした。

歴史の文献をつなぎ合わせたような資料重視の作風は好き嫌いがあるかも知れませんが、全体的に史実を大切にする落ち着いた雰囲気のある小説でした。

歴史小説をある程度読みなれている方のほうが、より楽しめる作品だと思います。

武神の階〈上〉 (角川文庫)
武神の階〈下〉 (角川文庫)

at 18:06, あーりー, 歴史小説

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上杉謙信 - 至誠を貫いた希代の勇将

上杉謙信―至誠を貫いた希代の勇将 (PHP文庫)
上杉謙信―至誠を貫いた希代の勇将 (PHP文庫)
永峯 清成(著)

上杉謙信を主人公とした小説です。軍神としての輝かしい面ばかりでなく、人間関係に悩み、いらだち、ときには失態を演じながらも精一杯生きる等身大の謙信が描かれています。

際限なく繰り返される関東への出兵や武田信玄との戦いに忙殺されながら、謙信は年をとっていきます。おれの人生はなんなのだ…という謙信のむなしいつぶやきが聞こえてきそうです。そういった虚無感や、人生でなにかを成し遂げねばという焦り。謙信が身近に感じられる一冊でした。

at 14:36, あーりー, 歴史小説

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蒲生氏郷 ライバルをクールに観察

蒲生氏郷 (学研M文庫)
蒲生氏郷 (学研M文庫)
近衛 龍春(著)

幼いころから頭のよかった蒲生氏郷は、信長に気に入られて世に出ます。信長の死後は秀吉に仕えますが、主君の秀吉をひそかにライバル視し、クールに観察しているのが印象的でした。

歴史小説は、同一人物でも作品よって描かれ方がまったく違うことがありますよね。『天を衝く』では無能な武将として描かれていた蒲生氏郷が、こちらでは頭脳明晰・勇猛果敢な名将となって活躍します。

at 13:23, あーりー, 歴史小説

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孫子 - 海音寺潮五郎(著)

孫子 (講談社文庫 か 1-1)
孫子 (講談社文庫 か 1-1)
海音寺 潮五郎(著)

兵法のカリスマを描いた歴史小説。

2部構成になっています。前半の主人公は孫武。風林火山でおなじみの、いわゆる孫子のことです。後半の主人公は、その孫武の子孫である孫ピンです。前半の孫武のほうがわりと有名ですが、個人的には後半の孫ピンの復讐劇に、手に汗を握りました。

孫ピンは友人の将軍にだまされて敵国の罠にかかり、両足を失ってしまいます。復讐を誓った彼は持ち前の明晰な頭脳を駆使して兵を動かし、自分をだました将軍を追い詰めていきます。

古代中国を舞台にした兵法合戦は読み応え十分です。「春秋左氏伝」「呉越春秋」「史記」などをもとに書かれています。

at 17:00, あーりー, 歴史小説

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