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七人の武蔵 - 司馬遼太郎、山岡荘八、津本陽らのコラボ

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七人の武蔵 (角川文庫)
七人の武蔵 (角川文庫)

司馬遼太郎、津本陽、山岡荘八、光瀬龍、武者小路実篤、海音寺潮五郎、山本周五郎といった、そうそうたる歴史作家のコラボレーションです。

7人の作家が7通りの武蔵を描いた短編集。次の7作品が収録されています。

司馬遼太郎『京の剣客』

武蔵の敵である吉岡の視点から描かれた作品です。かつては気が荒く、目覚ましいほどに強く、相手を無残に叩き殺していた吉岡憲法(直綱)。そんな彼も今ではすっかり穏やかな性格となり、趣味の釣りをしながらのんびりと暮らしています。

性格は丸くなったものの、剣の強さは健在。そのギャップに惹かれてグイグイ読み嵌ってしまいました。

吉岡憲法は武蔵と対決します。本来は弟の又市郎が武蔵の相手をすることになっていました。しかし、お前では武蔵に勝てない、ということで、兄の憲法が自ら武器をとるわけです。

よく知られている武蔵の小説では、武蔵と吉岡一門は計3回戦ったことになっています。でもじつは1回きりだったというのです。それがなぜ3回戦ったことになってしまったのかについても、この小説で触れられています。


津本陽『宮本武蔵』

津本陽の長編宮本武蔵 (文春文庫)とは別の作品です。武蔵の経歴を駆け足でコンパクトに紹介している印象です。後半は武蔵の剣術奥儀、つまり『五輪書』の奥儀について詳しく書かれています。

武蔵は「物事に拍子というものがある」とし、「勝つためには相手の拍子を読み取り、その拍子を外す拍子で打ちかけて」いくことが大事だとしています。

ほかにも「構えあって構えなし」や「遠き所を近く見、近き所を遠く見る」など、武蔵の実戦でのノウハウが述べられていて、とても興味深かったです。


山岡荘八『宮本武蔵の女』

晩年の武蔵と一人の女性の物語です。武蔵は60歳前後のとき、ある女性と出会います。女性のほうは30歳過ぎです。女性は「六十二年の武蔵の生涯を飾る花」となります。

女性と武蔵が睦まじい仲になっていく場面は新鮮でした。剣豪の武蔵とは別の顔です。頑固で照れ屋でキュートな武蔵にほのぼのとします。それだけに、クライマックスの悲劇的な急展開はショックでした。

宮本武蔵の墓は3つあるといいます。そのうちの一つには、武蔵の戒名にならんで、女性の戒名が「妻女の扱い」で刻まれているそうです。

光瀬龍『人形武蔵』

冒頭から惹かれます。「それは武蔵にとって、生涯忘れられない恐ろしい体験だった」 ホラー仕立ての異色の武蔵です。

武者小路実篤『宮本武蔵』

これもまた独特の武蔵でした。武蔵が友人を相手にこれまでの戦歴を語るという内容です。まず感じたのは、武蔵のしゃべり方がどこか現代風だということ。「トリック」というカタカナも飛び出します。

武蔵が語る内容も、飾らないざっくばらんなものでした。

「俺には、勝てる自信が無かった」「俺はこの人には及ばないと、思った」「だから(中略)試合はしなかった」と。勝てそうもない剣豪との戦いは避けていたことを、赤裸々に打ち明けます。

また佐々木小次郎と戦う気になった理由についても、面白い動機を語っています。よくしゃべる親しみやすいキャラクターの武蔵。違和感がありますが、それがまた魅力です。

海音寺潮五郎『宮本造酒之助』

武蔵の養子・伊織の視点から、おなじく武蔵の養子である造酒之助の恋と死が描かれています。

言葉のやり取りとは別に、登場人物のあいだで繊細な心のやり取りが交わされます。幼い伊織が大人の会話の裏にあるものを察知していく。それと同時に、読んでいる僕にも真相が伝わってきて、結末に近づくほど不思議なスリルを感じました。


山本周五郎『よじょう』

宮本武蔵の晩年の話です。不義理のために世間から爪はじきにされていた岩太という男が、やけくそでホームレス生活を始めた途端、人々から尊敬されるようになります。岩太は何が何だかわかりません。

僕もはやく先を読みたくてたまらなくなりました。最後の最後まで楽しませてくれる素敵なエンターテイメントでした。

at 11:59, あーりー, 歴史小説

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